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紳士服製造卸からODMへ 2016.7.12

2016/07/25

20160712

アパレルメーカーのサンエース(岐阜市、浅野和茂社長)は、ストック型卸しを主体とする紳士服メーカーから、デザイナーブランドのODM(相手先ブランドによる設計・生産)企業に事業転換し、業績を伸ばしている。16年1月期の売上高は前期比15%増(関連会社のサンワーク含む)となり、今期はさらに2~7月の上半期で25%増となる見通し。利益も黒字を確保している。

 

他社がまねできない

サンエースの祖業は紳士服製造卸。国内と海外でスーツを生産し、郊外型専門店や地方専門店などに卸売りしていた。しかし、大量生産・大量販売によるコスト競争の行く末、スーツ需要の低下などに不安を感じていた。ここ10年ほどは、パターンの工夫で動きやすさや着心地の良さを追求した商品を企画、実用新案も取得し、他社がまねできないオンリーワンのODM企業を志向してきた。

 

12年5月、他者が家業で経営していた縫製工場を受け継ぎ、法人化してサンワークを立ち上げた。これまでサンエースが営業して受注した仕事は協力工場に外注していたが、自社で縫製工場を持てば、縫製難度の高い仕事を安定して受けられると考えた。約5年前から、これまでの取引先の紳士服専門店に事業を縮小する旨を説明して回った。徐々に在庫も減らし、前期末で前シーズンの在庫はゼロにし、ODM事業で経営する体制を整えた。

 

社員がアイディア出しあう

前期、今期と売り上げが伸びたのは、都心百貨店に集まる有名デザイナーブランドとの取組が強まったため。口コミや紹介で、新規に取引したいというブランドが増えていることも大きい。強みは実用新案に裏打ちされた企画力と高難度の商品を作れる縫製技術力だ。

8通り着用できるベスト、腕を全方位に動かせるジャケット、サイクリングに適したパンツなど実用新案はこの10年で14件取得した。受け身ではなく、ODMでもより説得力を持って、働きかけられる武器を手に入れるために知的財産を重視した。実用新案の企画は半年に一度、有志で社員が集まり、「こんな服が面白い、欲しい、楽しい」などを雑談形式で出しあう。毎回10人ほどで出しあったアイディアを浅野勝三サンエース専務が抽出して具体的な企画に落とし込み、実用新案を申請する。

こうした商品を生産するサンワークには、特殊ミシンを含め100台以上の縫製機器を揃えており、布帛とカットソーの両方を縫うことができる。バイアスカーブのものでもうまく縫える。スタッフは中国人実習生が8人と日本人が7人。実習生のレベルは高く、丸縫いもできる。基本的には残業はさせず、休みもしっかりと確保して、給料も業界水準以上を払っている。当然、法令は順守し社会保険にも加入している。だから、自然と良い人材が集まってくる。提案力があり、腕がよいので工賃交渉でも主導権を握りやすい。

 

自社工場を持ち技術力を高める

日本人は工場長クラスのベテラン管理者を2人配置し、パタンナーはCAD(コンピュターによる設計)を使わずにパターンを起こせ、テーラーも縫える熟練工を置いている。さらに「今から技術者を育成しなければ将来縫える人がいなくなる」との危機感から、専門学校を卒業した20代の若手縫製工員2人を育成している。下記URLよりご確認をお願いします。にも日本人1、2人を採用する予定だ。

ODMのロットは平均して100~200枚。この枚数で納期は45~60日と一般的に見ると長いかもしれないが、短納期の生産は品質が低下する可能性が高いので受けない。また、ベーシックなカットソーアイテムなどシンプルな商品も基本的には受けない。それが不良品率の低下と安定した納期を実現し、逆に仕事が増えている。年間を通して「閑散期は無い」という。

縫製はメンズ、レディスのどちらでも対応する。

 

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