2019.7.10 繊研新聞に掲載されました
CFで高機能パンツ販売
デザイナー・百貨店ブランドODM(相手先ブランドによる設計・生産)主力のサンエース(岐阜市)は、今年からクラウドファンディング(CF)をテスト販売の場として活用し、手応えを得たアイテムでODMを拡大する取り組みを始めた。
目標の3倍以上の支援金が集まった
4月6~5月30日、CFサイトのマクアケで、サイクリングやキャンプといったアウトドアシーン向けの高機能パンツ「dDDD」(ディートリプルディー)のプロジェクトを掲載し、支援者を募った。20%オフのマクアケ価格でも1枚1万8400円と高額だったが、目標金額50万円に対し、最終的には支援者82人、173万5500円が集まった。
dDDDは膝の屈伸運動を考慮した特殊なパターンを採用しているので、ポリウレタンを使わなくても動きやすい。股には余分にパーツをつけ、開脚しやすくした。軍手やタオルを入れられる、前から後ろに続く大きなポケットをつけ、裾はリブで虫が入らないようにした。生地は綿に難燃加工を施した。
開発は昨年12月から、キャンプのヘビーユーザーの意見を取り入れながら進めた。通常のパンツだと平均して20パーツ程度だが、dDDDは3倍の60パーツを使った。サンプルは3回作り直した。縫製に手間がかかり、難度も高かったが、自社工場のサンワークで縫製し、品質面でもクリアした。
同社は、10を超える実用新案技術を持ち、メンズ・レディース向けに提案型のODMを行う。中でも動きやすいウェアの開発に力を入れ、特殊なパターンで腕を上下しやすいジャケットや自転車に乗る時の動きを考慮したパターンを採用したパンツなどを展開する。今回のCFで支援者を募った高機能パンツは約10年前に取得した実用新案技術がベースになった。
個性で差別化を
実用新案技術で差別化できるものの、その分個性も強くなった。バイヤーやデザイナーとの商談では「ちょっと個性が強すぎる」と採用されなかったり、採用されても売りである独自性が薄められてしまうケースが多かった。「本当に個性が強過ぎるのかをCFを通して試したかったが、差別化商品なら高額でも売れるのが分かった」とする。また、工場の閑散期対策としてCFを活用できる面もある。
今回のCFは「開発期間を含めた人件費を入れると赤字」だが、今回の試みを聞いたメンズアパレルから問い合わせがあり、新たなビジネスがスタートする見通しだ。今後も保有する別の実用新案技術を使ったアイテムをCFで打ち出していく計画だ。